非公開エピソード3~人違い~

※これは一年前、VIPメールで送った内容ですが

要望が凄く多いため、再筆致しました。

わたしと、主人との出会いエピソードです。


エピソード1はこちら


エピソード2はこちら






体育館で彼の姿を見たのを最後に、時は流れ

私は高校に進学し、彼のことを忘れかけていた。


私の高校は、受験を考慮し、1年生で修学旅行という

なんとも思い出感に欠ける高校だった。


修学旅行は長野県へのスキー研修だった。


私は正直、様々な理由から修学旅行には行きたくなかったが

クラスメイトにゴリおしされ、渋々参加することになった。


スキー場では、各自班に分かれ

それぞれに滑るのだが、私の班はスキー経験者が多く


絶好調、真冬の恋、スピードに乗って♪

っと皆、真冬の恋でもしてるんじゃないか?と言うくらい

とんでもないスピードで滑り降りていった。


私は、彼らを追いかけようとしたが

角度のキツイ所でこけてしまい

何度立とうと思っても板が滑って立てずにいた。


無理やり立とうと思うと

それ以上のスピードで、板が坂を滑っていく。

取り残されたのと、立てないので色々嫌になった。


その時、雪を巻き上げ滑っていた他校の修学旅行生が

私に気付き、助けに来てくれた。


彼は私の板を両手で持って坂と垂直にし


『ホラ。手。』


っと私に手を差し伸べた。



私は立ち上がり礼を言おうとすると

私の頭をポンと叩き

彼は猛スピードで滑り降りていった瞬間

私はゼッケンの名前を見て驚いた。


とんでもなく汚い字で【とものり】と書いてあった。


私は声の限り叫んだが、凄いスピードで滑る彼には聞こえなかった。

ゴーグルと帽子で顔は見えなかったが、”あの彼”だと確信した。



*



勇気を振り絞って店内突入してから1週間

私は廃人になったような顔で、レジのバイトの時間を終わるのを待った。


隣でレジを打っていたYが、慰めるように

『今日、すぐ近くでやってるお祭り一緒にいこう!』

と笑いながら話しかけてきた。


しかし、次の瞬間Yの顔が硬直し、口をパクパクさせた。

私は振り返ると、”あの人”が立っていた。


『先週はどうもありがとう。』

それだけ言うと、彼はメモ用紙を残して帰って行った。


私はドキドキしていた。


Yが何が書いてあるのかしきりに気にしていたが

私はどうしても一人で見たかったから、休憩まで見るのを我慢した。

メモに書かれていたのは、この上ない汚い字で


うえのともひさ

090-〇〇▽△-■■〇〇

と2行だけ書かれていた。


(とものりじゃねえ!!!!ってか惜しい!!)


私は心の中で叫んだが、そんな事どうでもよかった。

Yにお祭りの約束を断り、私は猛ダッシュで家に帰った。


ふるえる手を抑える為、枕と顔に携帯をはさみながら電話した。

彼は電話に出ると、すぐに電話を切り

自分からすぐにかけ直してきてくれた


私達はその日、3時間話した。


*


【鉄の女、解禁】


そんなメールが大学で広まった


男の子に見向きもせず、冷たくあしらい

全然彼氏を作らない私を、H子は相当気にかけていたようだった


私に彼氏ができたことを、自分のことのように喜ぶH子は

嬉しすぎて、皆にメールを送ってしまったことを反省しながら

私に謝ってきた。その姿はとても可愛かった。


何度かデートを重ね、私ははじめて彼の家に行くことになった。

道路から玄関まで40mはあるだろうか・・・


豪邸だった。


庭にはバスケットゴールが設置され

高級車がその横に何台か並んでいた。


玄関を開けると、3階まで吹き抜けのエントランスで

全面ガラス張り、正面には螺旋階段があり、その上の2階には橋が架かっていた


防音設備の整ったカラオケルームには

ギブソンのレスポールが何本も立ち並び

壁にはアーティスティックな絵が描かれていた。


TVの中でしか見れない風景がそこにあった。

私はこの場違いな空気に緊張し


『え・・・お小遣いとかいくらもらってたの?』


という、庶民溢れる質問をしてしまった。

彼は笑いながら

『小さい頃から今まで貰ったことない』

と予想を超える回答が返ってきた。


彼は小学生の頃から自分で稼ぎ

服や部活の遠征費も自分で払い

お年玉も、自分で使ったことがないと笑いながら話してくれた。


私は、無意識に【お金持ちのボンボン】扱いをしてしまったことを反省した。

彼は親の手も借りず、全てを自分でやりくりしていて

中学生の頃から、何かの仲介や、転売などをあいた時間だけ行い

それだけでその辺のサラリーマン以上に稼いでいた。


『どうして飲食店で働いてるの?』


飲食店と言えば、給料が安くて拘束が長い。

そんな彼が、働いてる意味を私は知りたかった。


『え?面白いから。』


あまりにもシンプルな答えに私はハッとした。

『人が楽しんでる空間を、つくったり見たりするのが楽しくてね

長い時間働くのも、今は苦じゃない。楽しいんだ。

お金を稼ぐのは簡単だけど

人と人との関わり合いを経験しておくのはそれ以上の価値がある』


そう言い、彼の部屋に通してくれた。

2階に架かった、幅が1.2m長さが6~7mほどの橋を歩くと

彼の部屋があり、そこにはざっと500冊以上の書籍が並んでいた。

時が経つのも忘れ、私達は共通点や将来の事を話した。


同じ世代の男の子の話は

過去の武勇伝や、どうでもいい自慢話ばかりでうんざりしていたが

彼の話は、今まで話した事のないタイプで、私にはとても面白かった。


なにより、私の未来が開けた気がした。



灰色に染まった私の世界は

徐々に新しい世界に彩られていった。



つづく。








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めしょんでした




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